日本の航空業界は「2030年問題」と呼ばれる懸念を抱えている。バブル期に大量採用した40代後半のパイロットが退職時期を迎え、旅客機を十分に飛ばせなくなるかもしれないという問題だ。専門性の高いパイロットはすぐには育てられない。手遅れとならないよう、養成機関の定員拡大や学生への奨学金制度創設など、産官学を挙げた取り組みが急ピッチで進められている。
欠航・路線廃止も
パイロット、客室乗務員、整備士…。昨年10月、東京都内の小学校に全日空の各スタッフが勢ぞろいした。児童は職種ごとにグループに分かれて授業を受け、荷物を預かるグランドスタッフを体験した6年生、松岡玲央君(12)は「大きさを測るのがうまくいかなかった」と悔しがった。全日空はこうした教室を20年までに全都道府県で開く。
日航も中高生を対象に、パソコンで翼の構造をシミュレーションする講座を東大と共同で開催。担当者は「広く空の世界に興味を持ってほしい」と強調する。
今も昔も子供の憧れの職業であるパイロット。ただ現役の年齢構成には大きな偏りがあり、現在40代後半となる世代が大きな割合を占める。航空需要の右肩上がりが続く中、この世代が30年ごろに退職時期を迎えると、深刻な人員不足に直面する恐れがある。