鍋に焼き鳥、親子丼。食卓に欠かせない鶏肉の高級品「地鶏」の産地間競争が激しくなりそうだ。愛知県が名古屋コーチンの生産倍増計画を掲げたほか、残る「日本三大地鶏」の比内地鶏、薩摩地鶏を誇る秋田、鹿児島両県も増産を狙う。販売先は限られ、消費者の奪い合いとなる可能性もあるだけに、関係者は「消費の裾野を広げる戦略が不可欠」と指摘する。
独立行政法人家畜改良センターの集計を基に調べると、在来種の血統を持つなど地鶏の規格を満たすのは40種ほど。出荷量の統計はないが年間600万羽程度とみられ、約6億8000万羽のブロイラーの1%前後。
同センターによると、2015年度の肉用コーチンの生産は92万羽で、徳島県の阿波尾鶏の200万羽に次ぐ2位。名古屋コーチン協会は「知名度は抜群。消費はまだ増える」と前のめりだ。
愛知県は種鶏提供を一手に担う種鶏場の新築移転を決め、17年度に1億3000万円を計上。稼働後約10年で200万羽へ生産を倍増させる計画だ。
出荷増を狙うのは他の産地も同じ。秋田県では、きりたんぽ鍋で有名な比内地鶏を58万羽生産する。販路拡大を狙い昨年、専任職員を東京に配属した。県は「鶏がらの引き合いも多く、生産拡大を目指す」としている。
鹿児島県では薩摩地鶏に並ぶ地鶏として06年に開発した「黒さつま鶏」の出荷が19万羽に達した。飼いやすいと評判で、黒豚、黒牛に次ぐ第3の特産品に育てる考えだ。