不正融資問題で業務改善命令を受けた商工中金の安達健祐社長は9日、「調査を継続して全容解明に努めたい。信頼回復に全力を挙げる」と反省の弁を述べた。だが、問題は支店での不正にとどまらない。本部は早くから不正を把握していたにもかかわらず、隠蔽(いんぺい)していたからだ。組織的な悪質行為は政府系金融機関の信頼を揺るがしている。
「危機対応の融資残高が減らないことに違和感があった」。別の政府系金融機関の幹部はこう漏らす。危機対応の融資残高は平成27年度末で3兆3829億円。東日本大震災の影響が残る24、25年度末の4兆円台からは減少したが、それでも高水準。28年度は9月末で既に3兆円を超えた。
背景には、予算を使い切らないと、次年度から減額されるとの危機感があったようだ。第三者委員会によると、「商工中金の存在感を示すためとして、需要を超えるノルマが支店に課されていた」という。
不正を見て見ぬふりをする役職員の「なれ合い」体質も問題とされる。池袋支店(東京都)で資料の改竄(かいざん)が発覚した際、当時の杉山秀二社長ら幹部にも報告されたが、わざわざ取引先から「事実と大きく違わない」との回答を得て、問題がないように装ったケースもあった。
住友商事は同日、社外取締役の杉山氏が「一身上の都合」を理由に4月30日付で辞任したと発表した。商工中金の第三者委の調査では、不正や隠蔽は杉山氏が経営の中枢だった当時に繰り返されていたことが判明している。杉山氏ら歴代社長を送り込んだ経済産業省の責任も重い。(飯田耕司)