そこで目をつけたのが、JTBが出資するスペインの旅行大手ヨーロッパムンドバケーションズ(EMV)が欧州で展開する乗り合い型ツアーだ。EMVが昨年実施した国境をまたぐツアーは、約800のコースに約12万7000人が利用する人気で、長期滞在の需要を取り込んでいた。
ツアー客が一人でもいればバスを走らせるビジネスモデルのため採算が不安視されたが、16年5月から、EMVの主要顧客のうち中南米などスペイン語圏を対象に国内バスツアーを先行して実施したところ、中高年を中心に好評だった。地方の宿泊施設が手頃な価格設定にできることも含め、「損益分岐点に十分達する見通しが得られた」(座間社長)という。
異色のビジネスモデルは、今後の展開に向けた青写真も型破りだ。
「素晴らしいプロジェクトが日本からアジアに広がっていく」。3月上旬の記者会見でEMVのルイス・ガルシア社長が22年のプランとしてぶち上げたのは、バスと船でアジアを縦断するという壮大なツアー計画だ。北海道から始めて韓国、中国に入り、最終的にはシンガポールまでつなぐという。
訪日客の地方誘客には2次交通網の整備などが課題だが、バスツアーならば公共交通機関で行くには不便な観光スポットも行くことが可能だ。JTBは今後、ツアーコースとなる「隠れた名所」を掘り起こしていく計画で、九州エリアの拡大など国内コースのさらなる充実を図る。(佐久間修志)