量子科学技術研究開発機構(量研機構)と日立製作所などの大手電機メーカー4社は13日、次世代のがん治療装置を共同開発すると発表した。この日開発協定を結んだ。開発するのは、重粒子線治療装置と呼ぶ装置で、今後10年にわたり小型化や製造コストの引き下げに共同で取り組む。重粒子線装置は日本が技術的に先行しており、今後はオールジャパン体制で普及を目指す。
粒子線治療装置は、大型の加速器を使って極めて小さい粒子を患部に照射し、がん細胞を破壊する仕組み。ピンポイントで病巣をたたくため体への負担が少ないとされる。このうち重粒子線装置は、炭素の原子核などの重粒子を使うもので、ほかの方式に比べて照射の回数を抑えられるのが特長だ。
開発には量研機構と日立のほか、三菱電機と東芝、住友重機械工業が参加。従来装置は設置に体育館ほどの面積が必要だったが、超電導材料や大出力レーザーの活用で縦10メートル×横20メートル程度に小型化する。また、100億円以上かかる製造コストは、80億円以下に引き下げることを目指す。協定に伴い、各社で研究費を分担し、中核となる技術を共有する。
重粒子線装置は、日本で5台が稼働しているが、海外は水素の原子核を用いる陽子線装置が中心で、ほとんど利用されていない。ただ、小型化や製造コストの大幅な引き下げが進めば、一般の病院にも装置を普及させられる期待がある。重粒子線による治療費は250万~300万円かかるが、100万円程度に削減できる可能性があるという。
20年後には世界市場が1兆円に膨らむとの見方もある。