熊本地震の発生から半年が経過し、被災したホンダやソニーなど主要企業の関連工場はほぼ復旧した。しかし部品供給が滞ったトヨタ自動車が組立工場の一時停止に追い込まれるなど影響は九州以外にも拡大。製造業は在庫を極力減らす効率化を進めており、供給が一部でも止まると生産全体に響くサプライチェーン(部品の調達・供給網)のもろさが露呈した。
「建物がこれほど損害を受けるとは思わなかった」。熊本県菊陽町でカメラ用の画像センサーを製造するソニー子会社の上田康弘社長は、工場の建て直しや撤退まで頭によぎったという。
ソニーの部品はデジタルカメラに欠かせず、キヤノンやニコンの生産にも一部に遅れが出た。カメラ業界の関係者からは「年末商戦にも影響が残る」との声も漏れる。ソニーは復旧に3カ月を要したが、今後は2カ月以内に再開できるよう生産の分散化などを進める。
トヨタはグループ企業のアイシン九州(熊本市)の工場が被災し、ドアの開閉を調整する部品の供給が滞った。金型を運び、系列の別の工場で代替生産を始めたが、愛知県などの組立工場ではトヨタ車生産の全面再開に3週間かかり、約8万台分の減産になった。
東日本大震災でも生産停止に陥ったトヨタは、危機対応策の強化を進めてきたが、天災への対応の難しさがあらためて浮き彫りになった。部品供給の混乱で、米ゼネラル・モーターズ(GM)が一部工場の操業を休止し、海外の自動車メーカーの生産にも影響が出た。