シャープは鴻海グループとして新たなスタートを切る。安くて高品質を売りに世界市場で長らく優位性を保ってきた日本の電機メーカーは、巨額投資でコスト競争力と技術力を高めてきたアジア系企業の台頭になすすべなく、“オンリーワン技術”への過信が経営の病巣を広げたといえる。「日本のものづくりは大丈夫か」という危機感も高まっている。
白物家電事業が中国ハイアール・グループ傘下になった三洋電機、中国美的集団に買収された東芝の家電事業会社「東芝ライフスタイル」など、アジア系企業による日本の電機メーカーの買収が相次ぐ。
さらに、産業革新機構の支援で経営再建を目指すジャパンディスプレイや、家電事業について「この1、2年のうちに(存続か売却か)見極める」(東原敏昭社長)方針の日立製作所など、外資に買われる企業や事業はさらに増えるかもしれない。
日本の製造業が地盤沈下したのは、韓国や中国、台湾系の受託製造サービス(EMS)の圧倒的なコスト競争力に太刀打ちできなかったからだ。
政府系研究所の幹部は「中国や台湾のEMSは“製造力”を徹底的に磨いて経験値を上げ、技術力とコスト競争力を高めた」ため、アップルなど世界的企業の多くを顧客に抱え、巨額投資を早期に回収できるエコシステムを構築したと分析する。売上高16兆円の鴻海はその代表だ。