台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業を電子機器受託製造(EMS)世界最大手にのしあげた郭台銘会長(英語名=テリー・ゴウ)がついに本性をあらわした。シャープの買収が承認された鴻海の株主総会で「飼い主を代えても悪い卵しか産まない鳥はいらない」と人員削減に踏み込むと宣言したのだ。「雇用を守る」などの条件を並べ「トラスト・ミー(信じてくれ)」と訴えた姿から豹変した。ただ、業界からは「生き馬の目を抜くグローバルビジネスで、どんな手を使ってでも勝ち抜いた執念をシャープは学ぶときだ」との声も上がる。
釣った魚にエサは…
「日本式のやりかたは、会社にとって利益がないと判断したらきっぱりカットしたい」
6月、台湾・新北市の鴻海本社で開かれた株主総会で、郭会長はこう力説した。
これまでは、シャープ側の心情に配慮した言動が目立ち、4月の調印式後の記者会見では「シャープの歴史と、技術の革新者として果たしてきた役割を尊敬する」などと持ち上げていた。同じ会見で、シャープの新社長への就任が決まった戴正呉副総裁は、その100年の歴史に敬意を表し「シャープ創業者、早川徳次氏の記念館をつくりたい」とまで語ったほどだ。