燃費データを不正に測定していた問題でスズキは31日、対象車両のデータを測り直した結果「燃費に影響なし」とする再報告を国土交通省に行った。ただデータを法令と違う不正な方法で測定していた事実に変わりはなく、ブランドは大きく傷ついた。問題発覚でスズキの5月の軽自動車販売は2割弱も減少。イメージ悪化で消費者離れが進めば、販売低迷が長期化する恐れもある。
「5月の軽販売は18%減った」。スズキの鈴木修会長は31日の記者会見で、不正問題の発覚後、販売が激減したとの認識を示した。
不正を働いた自動車メーカーに対する消費者の目はとりわけ厳しく、不正発覚後は確実に顧客離れが進む。昨年9月に排ガス規制逃れ問題が発覚したドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の1~4月の世界販売は前年同期比2%減少。また4月に軽で燃費の不正問題が発覚した三菱自動車の4月の国内軽販売はほぼ半減している。
スズキの国内販売はただでさえ苦戦している。利益重視で軽の値引きを控えているためで、1~4月の国内販売は3・2%減った。不正問題に伴うイメージ悪化で、6月以降もスズキ車を購入の選択肢から外す消費者が増え、販売に悪影響が及ぶ懸念は強い。
スズキは今回の不正問題の原因として「法令違反に関する関係者の認識不足」(鈴木会長)を挙げた。実際、今回の不正は、車両の試験コースが海に近く、風の影響を受けやすかったことから、屋外ではなく、室内設備を使ってデータを取得したために起きた。同社は、問題の改善に向け試験コースに2億円程度を投じて防風壁を建設する。
ただ、わずかな投資を渋り、メーカーにとって死活問題といえる「信頼」を失ったツケは大きい。(今井裕治)