手のひらサイズに高機能を詰め込んだスマートフォンが全盛の携帯電話だが、その歴史を語る際に無視できないのが、1985年に発売された車載・携帯兼用型自動車電話「ショルダーホン」だ。重さ約3キロ、文字通り肩から下げて持ち運ぶ。このプロジェクトに当時課長だった加藤薫社長とともに、係長として携わった。87年に発売した日本初の携帯電話の開発も担当し、携帯の黎明(れいめい)期を支えた自負が、その後の仕事ぶりに影響を与えたという。
「多くのパートナーと連携を進め、他の人のアイデアをしっかり聞いたことが技術革新につながった。この時と同じ考え方で他の業務もこなしてきた」と振り返る。
技術系だが、法人営業や経営企画、業務改革など幅広い業務も経験。直近は加藤社長の右腕の副社長として効率化によるコスト削減に取り組み、業績回復の一翼を担った。加藤氏は「経験豊富で人柄は実直。ドコモを引っ張っていってくれることは間違いない」と全幅の信頼を寄せる。
足元の業績は好調だが、屋台骨である国内通信事業がいつまでも堅調とはかぎらない。加藤氏が新規事業やコンテンツサービスなどの「スマートライフ領域」に注力したように、複数の収益源を育てる必要に迫られており、経営のかじ取りは複雑さを増している。
しかし、気負いはない。ドコモは「営業利益8200億円以上」など2018年3月期の中期目標の数値を、17年3月期に前倒し達成する業績予想を打ち出しており、「まずはこれを実現したい」と話す。
座右の銘は「失意泰然、得意淡然」。どっしりと構えて一歩ずつ着実に進む経営を行う考えだ。(高橋寛次)