「東日本大震災を機に学んだBCP(事業継続計画)対策が生かされているのか?」「(必要な量を必要な時に調達する)ジャスト・イン・タイムを基本とするトヨタ生産システムの弱点」という声が聞かれるが、現段階では、的を射た指摘とは思われない。
BCP対策として1次サプライヤーへの発注を複線化することは従前から当たり前であったが、東日本大震災は半導体や塗料など2次・3次サプライヤー段階で再び単線化していることを浮き彫りにした。この反省に立ち、現在では2次・3次サプライヤーまで、しっかりと複線発注ルートを整備済みだ。
BCP対策の成果が試されるのは、現地の被災者のライフラインを優先的に確保し、交通網などのインフラ復旧が望める段階に差しかかったときだろう。型・治具の搬送よりも、今は人命優先だ。バックアップ機能が動き出すにも、一定の時間を要する。そうした状況下で、部品供給体制の情報確認を進めるため、まずは工場稼働を停止させるところに、慎重を期して行動するトヨタの姿勢を見ることができる。
トヨタ生産システムが、国内自動車産業の国際競争力を生み出す大切な要素であることに疑いはない。根底を支えるのが、ものづくりを支える愚直で優良な人的資源である。若者のものづくり離れや労働人口の減少は、ものづくりを基盤とする将来の国際競争力維持への多大な不安要素だ。熊本・大分地域が、良質な労働力を有し、その成果が自動車の国際競争力を支える大切な一翼を担ってきたことを改めて認識せざるを得ない。
ものづくりの根底を支える生産活動は、地震大国であるわが国のさまざまな地域に根付いている。予期しない大地震が自動車生産活動に影響を及ぼすリスクは常にある。大切なことは復元力であり、皆が協力を惜しまずにものづくりをつなごうとする思いではないか。