太洋社は16年1月に支払い不足分の約1億6000万円を支払うよう求めてきたが資金繰りに行き詰まっていた芳林堂は、約9000万円しか支払うことができなかった。このため太洋社は2月3日、書籍や雑誌など商品の供給を停止。芳林堂の店舗に新刊が入荷しない異常事態となった。
追い打ちを掛けるように太洋社が自主廃業を発表し、芳林堂に在庫書籍の販売停止と引き揚げを要求。これを受けて事業継続の断念に傾いた芳林堂は「書泉」と書店事業の事業譲渡契約を締結。2月25日には外商事業の会社分割による新会社を設立、書泉と株式譲渡契約を結び役割を終えた。(東京商工リサーチ)
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【会社概要】芳林堂書店
▽本社=東京都豊島区
▽設立=1948年3月
▽資本金=2000万円
▽負債総額=20億3535万円
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〈チェックポイント〉
芳林堂が破産した後の3月15日、太洋社が破産を申請した。両社の破産申立書には芳林堂は「太洋社が突然、不足分の支払いを要求してきた」と、太洋社は「突然、芳林堂が破産した」と、お互いが元凶のような記載があった。
多店舗の書店を取引先にして売り上げを拡大したい太洋社と、資金繰りを支援してくれる取次業者を求めた芳林堂。外部からは両社は蜜月関係に映ったが、蓋(ふた)を開けてみるとお互いの思惑しか見えてこない。
相互補完を求めた2社は、それぞれじり貧から脱却できないまま、お互いの首を真綿で絞めるように共倒れした。(東京商工リサーチ常務情報本部長 友田信男)