三井物産は23日、平成28年3月期の連結最終損益予想(国際会計基準)を下方修正し、700億円の最終赤字(前期は3064億円の黒字)に転落する見通しとなったと発表した。赤字は財閥解体後の昭和22年に同社が創業して以来初めて。従来予想は1900億円の黒字だった。銅や液化天然ガス(LNG)など資源・エネルギー価格の下落を受け、事業や資産の評価を低く見直す減損損失が膨らんだ。
中国など新興国経済の減速で資源価格は低迷が続いており、資源・エネルギー事業で計約2600億円の減損損失を計上した。内訳は、チリの銅事業会社への投資で約1150億円▽オーストラリアのLNG開発計画の遅れで約400億円▽ブラジルの資源事業会社の業績悪化に伴う350億円-など。
三井物産は大手商社の中でも最終利益に占める資源事業の割合が最も高く、中国経済減速の長期化に伴う資源安が直撃した格好だ。
同日会見した安永竜夫社長は「大変遺憾だが一過性の損失であり、引き続き資源はキャッシュを生む重要な収益の柱。資源の安定供給にも責任がある」と述べ、優良な新規案件には今後も取り組む方針を示した。モザンビークでのLNG開発に対する最終投資の決断も、平成28年度中に行う方針。1株あたり32円の期末配当は据え置いた。
また、安永社長は「非資源分野が価格下落を補えなかった」とも述べ、資源・エネルギー事業の人員の一部を、メディカル・ヘルスケア事業や食料事業などの成長分野に振り向ける方針も示した。事業の見直しを急ぎ、損益の改善を目指す。
大手商社では資源安により減損損失を計上する動きが相次ぐ。住友商事はアフリカのニッケル事業などの収益悪化に伴う減損損失を計上し、28年3月期の最終利益予想を期初の2300億円から1000億円へ下方修正した。また、三菱商事もチリの銅鉱山に出資しており、減損損失が出る恐れがある。(上原すみ子)