■“酔い”低減の可能性
韓国サムスン電子は、ヘッドフォンに取り付けられた電極から耳の神経に電気信号を送ることで、ユーザーに“動き”も体験させられる仮想現実(VR)ハードウェア「Entrim4D」を発表した。
頭部に装着して360度画像を視聴できるヘッドマウントディスプレーの「Gear VR(ギアVR)」を利用し、それに独自のヘッドフォンを組み合わせるとみられる。VRによって、ユーザーはさまざまな世界を体験できるが、そこから得られる情報は映像と音声のみである。
そこでさらに没入感を高めるためサムスンが考案したのがEntrim4D。あらかじめ映像内の動きから生成されたデータを素に、ヘッドフォンから電気信号を耳に送る。詳細は不明だが、おそらく平衡感覚を司る三半規管の神経を刺激するのだろう。これによって、ユーザーは映像と同期した“動き”も感じられるようになる。例えばドローンのモーションセンサーから直接得たデータを利用すると、ユーザーは、ドローン視点の映像を観ながら、実際に飛んでいるように感じられるという。
また、Entrim4Dを使うと、“VR酔い”も低減できるという。VRを体験していると、自分は動いていないのに、あたかも自分が動いているような映像を見せられることで、脳が錯覚を起こし気持ちが悪くなるVR酔いが発生することがある。そこで、Entrim4Dを使うことで、ユーザーに自分が動いていると感じさせることで、VR酔いを低減できる可能性があるとしている。
神経に電気信号を送ることに不安も感じられるが、この信号は脳卒中患者が治療で平衡感覚を取り戻すのに使われているのと同等のものといい、Entrim4Dの開発にあたっては、ハードおよびソフトの開発者に加え、生体医学のエキスパートも参加し、既に1500人に対して検証を行なっているという。(インプレスウオッチ)