シャープの経営再建をめぐる交渉が大詰めを迎えている。同社は24日にも定例の取締役会を開いて台湾の鴻海精密工業からの支援案と、政府系ファンドの産業革新機構の支援案について最終協議し、再建策を決定する構えだ。7000億円規模の支援を提案した台湾の鴻海精密工業が優勢だが、条件面では認識の違いも目立つ。対する産業革新機構は巻き返しを図っており、経営陣はいまだ両案の間で揺れ動いている。正式決定は25日に設定した臨時取締役会にずれ込む可能性もある。
「シャープにとっても、日本の成長にとっても良い案だ」。革新機構の志賀俊之会長は19日の講演でこう強調した。液晶以外はシャープを軸に国内産業を再編するとの考えを示した上で、「真剣に考えて選択してほしい」と訴えた。
今月に入り、シャープの高橋興三社長が鴻海との優先的な交渉入りを表明したことから、鴻海案が有力とみられてきた。しかし鴻海の郭台銘会長が「太陽光パネル以外は残す」「40歳以下の若い社員の雇用は守る」と話したことで、事業や雇用の維持を求めてきたシャープ側との認識の違いが表面化した。
こうしたすきま風を横目に、革新機構は13人のシャープ取締役のうち5人の社外取締役を中心に説得を続けている。鴻海支持とみられるファンド出身の2人は直接の利害関係者だとして「議決から外すべきだ」との指摘もあり、主力取引銀行の幹部は「すんなりと決まる雰囲気ではなくなっている」と漏らす。
シャープは20日に取締役を集めて幹部会議を開き、鴻海との最近の交渉状況について協議したが、関係者によると決定した案件はなかったという。
郭会長と志賀会長は共に「人事を尽くして天命を待つ」との心境を語る。最終局面を迎えてもシャープ経営陣の方向性が定まらない中、銀行首脳は「これだけ議論は詰まっているのだから、2月中にしっかり決めてほしい」とくぎを刺した。