■経営改革の鍵を握る社外取締役
東芝の利益水増し問題は、日本の企業統治(コーポレートガバナンス)に対する信頼も根底から揺さぶった。同社は9月末の臨時株主総会に向け、新たな経営陣を発表したが、11人の取締役のうち、過半数の7人を社外取締役とする。今回の事件を調査した第三者委員会が「企業統治が機能不全に陥っていた」と厳しく批判したのを受け、取締役会議長も社外取締役から選ぶ方針だ。同社への信頼を回復するには、外部の目で経営を監視する社外取締役の役割が大きいが、企業統治の実効性が伴わず、形骸化してしまえば意味はない。取締役会の情報共有を進めるなど、トップの意識改革も同時に問われていることを忘れてはならない。
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東芝の利益水増し問題は、経団連会長候補とされた社長たちが目先の利益確保を優先し、部下たちに「チャレンジ」と呼ばれる厳しい収益目標を課したのが発端だ。目標を達成するために不正な会計操作が主力部門に広がり、利益を水増ししていった。第三者委は「経営判断で不適切会計が行われた」と指摘し、歴代3社長はそろって辞任に追い込まれた。
この事件を受けて9月に発足する経営体制では、三菱ケミカルホールディングス会長で経済同友会代表幹事も務める小林喜光氏やアサヒグループホールディングス相談役の池田弘一氏ら7人が社外取締役に就く。うち小林氏や池田氏ら3人が経営者、会計士が2人、弁護士が1人となり、経営刷新委員長を務める伊丹敬之東京理科大教授は留任する。