椙山女学園大学・脇田泰子准教授の『スポーツ放送の発展とユニバーサル・アクセス権』を参照して話を進めている。
英国では98年に特別指定行事リストを発表。行事はA・B2つのグループに判別し、Aは基本的に独占を禁止、Bは有料放送の独占は承認するが、同時に地上波放送局による2次利用の権利を認めた。これによってハイライトやダイジェスト放送が担保された。
オリンピックやサッカーのFIFA(国際サッカー連盟)ワールドカップ決勝トーナメントはAで、UEFA(欧州サッカー連盟)の決勝トーナメント、テニスのウィンブルドンや競馬のダービー、ラグビーのワールドカップなどもA指定だ。ジ・オープンはBで、高額な放送権収入をめざす競技団体には一定の配慮がなされた。
英国の考え方は欧州委員会で承認され、今では欧州連合(EU)全体の取り組みとなっている。指定行事もドイツ、イタリア、フランスなど加盟国の事情に合わせられた。スポーツを公共財、文化とみなす欧州的な考え方の反映だといっていい。
◆無料放送を維持
一方でプロスポーツが発展し、産業化が進む米国での反応は鈍い。米国では早くから民間放送局のスポーツ独占が進んだ。オリンピックの高額な放送権料による1社独占をみるまでもなく放送局は多額のスポンサー収入によって無料放送を維持してきた。こうした傾向はまだ続くだろう。