国際サッカー連盟(FIFA)幹部らをめぐる汚職事件が表面化して1カ月が過ぎた。捜査が深く進んでいるのか、最近の報道量は減っている。
世界が震撼(しんかん)する事件のさなか、ある海外報道に目を奪われた。メディア・コングロマリット「21世紀フォックス」の最高経営責任者(CEO)、ルパート・マードック氏が退任、息子に経営トップを任せるという。
これまでも交代が噂されながら、マードック氏はトップの座に座り続けた。しかし、御年84歳、さすがに今度こそ第一線からの引け時と考えたか…。
◆高騰の要因作る
FIFAの汚職事件は放送権ビジネスと密接に絡む。ワールドカップ(W杯)の放送権料は1大会だけで軽く20億ドル(約2450億円)を超える。高騰の要因はほかならぬマードック氏にあった。
祖国の豪州、次いで英国と彼は相次ぎ新聞買収に成功。1990年には衛星テレビ「BスカイB(British Sky Broadcasting=BSB)」を創設、スポーツと映画の有料放送を始めた。
目をつけたのがセリエA、リーガ・エスパニョーラなどライバル・リーグに後れをとり、収益や観客動員で低迷する英国伝統のフットボールリーグだった。待遇に不満をもつディビジョン1(1部リーグ)10チームを引き抜き、「プレミアリーグ」を創設した。
それまで民間放送ITV(Independent Television)が推定1300万ポンド(現在のレートで約25億円)で保有していた放送権を一気に3550万ポンドにまで引き上げた。さらに次の5年間で3億400万ポンドという巨額の権利料を支払っている。