【高論卓説】競合から協調へ 地域創生の鍵に 森岡英樹 (1/2ページ)

2015.6.19 05:00

 ■日本郵政と民間金融提携

 日本郵政グループのゆうちょ銀行は三井住友信託銀行、野村ホールディングスと個人向け資産運用の共同出資会社を設立する方向で大筋合意したと報じられた。新会社を通じて郵政グループ専用の投資信託など運用商品を開発するほか、郵便局の顧客に対して信託銀行や証券会社に運用を一任する「ラップ口座」も取り扱う予定であるという。日本郵政グループが民間銀行・証券大手と新会社を設立するのは初めてである。

 この提携劇に触れ、日本郵政グループは民間金融機関と競合から協調に大きくかじを切ったとの印象を強く受ける。持ち株会社の日本郵政および傘下のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の金融2社は今秋に株式を東証に上場する予定であり、上場を前に民間金融機関と提携することで企業価値を高める狙いがある。

 日本郵政の西室泰三社長は昨年12月の会見で、「地方銀行や信金・信組から一緒に仕事をしないかという話があれば、積極的にやっていく」と業務提携に前向きな発言をしていた。それが徐々に具現化しつつある。

 一方、自民党の「郵政事業に関する特命委員会」(委員長・細田博之幹事長代行)がゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の限度額引き上げについて検討を開始したのは今年2月から。自民党は昨年の衆議院選挙で「ゆうちょ銀行・かんぽ生命の限度額見直し」を公約に明記していたためで、さらに、ゆうちょ銀行については住宅ローンへの進出、かんぽ生命保険についてはがん保険への業務拡大も検討のテーブルにのせる意向だった。

 「一時は、春の統一地方選挙前に限度額引き上げの意見書をまとめる動きもあった」(地方銀行幹部)ほど盛り上がっていた。しかし、ここにきてその意欲は急速にトーンダウンしている。日本郵政の民間金融機関との提携戦略と無縁ではあるまい。

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