老朽化したマンションや団地の建て替え需要がブームとなる兆しが出てきた。住民の合意形成が難しく、建て替えが進まなかったが、地域と一体となったまちづくりや建設費用の低減などのデベロッパー各社の取り組みが実を結んでいる。国も建て替え促進に向け、昨年12月に施行された「改正マンション建て替え円滑化法」(改正マンション建て替え法)に続き、新たな施策を見据えて検討を進める。工場や社宅跡地などのマンション適地の供給が一巡した中、新たな供給源としての「建て替え」に期待が高まる。
「住民の合意形成や行政との関わりなど、難易度の高いプロジェクトだった」
公道を付け替え
旭化成不動産レジデンスが5月18日、メディア向けに開催した大規模団地「調布富士見町住宅」(東京都調布市)建て替え事業の説明会。同社が事業協力者として参画してから新築マンション完成まで約7年。向田慎二・マンション建替え研究所長は感慨深げに語った。
再建された新築マンション「アトラス調布」では、改正前の同法を活用した建て替えとしては全国でも珍しい公道の付け替えを実施した。周辺の既存道路と接続するため、敷地内北側にあった市道を新しい居住2棟の間に移したうえ、通行車両の速度を抑制しようと道路沿いに植栽帯を配置した。高齢居住者が長期間の仮住まいで不安を抱かないよう支援するなど、地域に寄り添った事業となった。