東芝と技術研究組合国際廃炉研究開発機構は27日、宇宙から降り注ぐ「宇宙線ミュオン」と呼ばれる粒子を使い、福島第1原発の原子炉内部で溶けた燃料(デブリ)を測定する装置を開発し、公開した。新たに開発した装置は、約30センチ単位で原子炉の圧力容器内の状態を把握できる。今後、測定試験や据え付け工事を経て、2015年度中に福島第1原発2号機でデブリの測定を開始する。
宇宙線ミュオンは、ピラミッドの内部調査や火山の密度測定などに利用され、物体を通り抜ける能力が高いのが特徴だ。今回、東芝は、米国のロスアラモス国立研究所が開発した測定方法を採用した。ミュオンが物体を通過する際に散乱し、進路が変わる性質を利用した方法でデブリを測定する。
福島第1原発2号機の測定では、原子炉の建屋を挟み込む形で装置を設置する。ミュオンの散乱角度を解析することで、デブリの位置や性質の状況を把握する。東京電力は、数十日間に渡って、2号機の原子炉圧力容器内のデータを収集し、デブリの取り出し作業に向けて、前進させたい考えだ。
11年の福島第1原発の事故では、冷却材の喪失で原子炉燃料が溶解し、圧力容器内や、その下部に多数のデブリがあるとみられている。廃炉作業を進めるには、デブリを正確に把握し、取り出すことが不可欠となっている。原子炉内は依然、放射線量が高いため、ミュオンを用いた測定装置に対し、大きな期待が寄せられている。