軽くて強い素材「炭素繊維」を使った材料や部品の開発・普及が進んでいる。「究極のエコカー」といわれる燃料電池車の発売などを追い風に、軽量化による燃費向上の利点を生かし、従来は鉄だった一部構造部品にも採用された。世界シェアの7割を占める日本企業3社は、耐熱性など技術開発を進めて活用領域を広げ、中国などの新興勢力に対するリードを広げる。
「やっと(自動車の)構造部品に採用されるレベルまで持ってこられた」。東レの日覚昭広社長は、トヨタ自動車が今月15日に発売する燃料電池車「MIRAI(ミライ)」に炭素繊維と樹脂の複合材料が使われた意義をこう強調した。
炭素繊維は鉄よりも強度が10倍で重さが4分の1という特性を生かして、軽量化による省エネが求められる航空機などで採用が進んでいる。高級車の一部部品にも使われているが、部品への成形時間の長さやコストが課題で量産車の構造部品には適さなかった。