「MRJ」は、三菱重工業が平成20年に事業化を決定した。当初の計画では23年に初飛行、25年に初号機を納入するとしていたが、主翼の材料変更や検査不備などが影響し、3回にわたって計画のスケジュールを遅らせてきた。
初のジェット旅客機開発で、実物の機体もない。計画が遅れる中、航空会社への売り込みは競合メーカーに対して不利な条件を背負っての展開を余儀なくされた。だが、従来の同型機と比べて燃費を2割抑えられる経済性、広い室内空間といった快適性など、MRJの性能に対する航空各社の関心は高く、初号機を納入する全日本空輸に続き、今年8月には日本航空も32機の購入を決めた。
航空機市場は、格安航空会社(LCC)が相次ぎ参入し、近距離路線網の拡充を競っており、MRJのような座席数が100席未満程度の小型ジェット旅客機への需要は高い。その追い風もあり、キャンセルができるオプション契約を含めたこれまでの受注は計407機に上っている。
ただ、小型ジェット旅客機市場では、老舗メーカーのカナダのボンバルディアとブラジルのエンブラエルの2強が、すでに多くの実績を持つ。2強に対抗するには今後、「座席数の異なるモデルなどラインアップの充実が必要」(三菱重工の大宮英明会長)なほか、まだ受注を獲得できていない欧州市場などでの顧客開拓が急がれる。