販売台数の差が月を追うごとに接近するダイハツ工業とスズキは軽トップの座を奪い合う様相。スズキは過去34年間首位を快走した後2006年度に首位から陥落し、ダイハツの後塵(こうじん)を拝してきた。スズキは7年ぶりの「軽ナンバーワン」の冠が目前に迫っている。いやが上にも販売には力が入る。
軽自動車の受注台数が2桁減少するにもかかわらず、トップを争う2社が爆走するのは不可解な現象だ。無秩序な戦いの終末にあるのは、荒れ果てて疲弊した国内事業基盤と失われる業界の健全性だ。愚かな過ちを繰り返すべきではない。
デフレから脱却できないまま国内景気減速の暗雲が漂う中で、消費税の再増税を契機とする車体課税改正論議が政府で開始された。消費税率を10%に引き上げると同時に廃止される取得税収1900億円の財源は、来年4月の軽自動車税増税分の900億円と、取得時に徴収される環境性能課税の1000億円でまかなう方向だ。廃止される取得税が環境性能課税に置き換わる構造にすぎず、新車需要は圧迫されるだろう。
自動車課税の体系的見直し論議の盛り上がりの無さには失望を禁じ得ず、国家経済の要である自動車産業の国際競争力向上に向けた戦略論が相変わらず欠けている。世界第3位の国内新車市場の未来図は、自動車産業の国際競争力を左右する重要な要素であるはずだ。
すでに息切れ気味の国内新車需要が消費税10%時代を迎えるとなると、先行きを非常に懸念せざるを得ない。買い替え促進補助などでその場を乗り切っても、先には一段と深い谷が控えるだろう。(自動車アナリスト 中西孝樹)