豊田通商は16日、世界初のクロマグロ完全養殖に成功した近畿大学と共同で、受精卵の孵化(ふか)から、体長5センチ程度の稚魚に育てる人工種苗の量産化事業に乗り出すと発表した。将来の海外展開も視野に共同で水産養殖事業を推進する覚書きも結んだ。
豊田通商は、全額出資でツナドリーム五島種苗センター(長崎県五島市、資本金5億円)を設立済み。来年5月から陸上水槽で育成し、来年度は年産約4万尾、2020年に30万尾の稚魚生産を目指す。
豊田通商の加留部淳社長は「天然マグロを保護する社会的な使命にもつながる」と意義を強調。近畿大の清水由洋理事長は「生産量拡大に加え、世界に挑戦したい」と豊田通商と組んだ理由を話した。アジアや米国向け輸出や将来の養殖事業も検討している。
クロマグロは乱獲で激減し、日本政府は3月に15年以降の天然幼魚(ヨコワ)漁獲量の規制強化を打ち出し、資源確保につながる養殖の重要性が高まっている。
近畿大は、人工孵化から育った成魚が産卵するクロマグロの完全養殖に02年に成功。豊田通商とは10年に提携、五島市で稚魚をヨコワに育てる中間養殖を開始した。今回の提携拡大で一貫生産の事業化につなげる。