ビルの消費エネルギー全てを、そのビルで創出するエネルギーでまかなう「ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」の第1号争いが本格化している。大手ゼネコンは商業化のめどを2020年に見据え、「乾いた雑巾をさらに絞る」ような省エネ・創エネ技術の開発を進めている。ただ、コスト高や太陽光発電の効率向上など、ZEBの普及を妨げる課題は残る。
大成、大林が実験
都心のビル1棟、または狭小な地域で年間のエネルギー収支をゼロにする「都市型ZEB」。今春、大成建設と大林組が実証実験を相次いで始めた。両社とも今年度にZEBを達成する見込みで、お互いにライバル視している。
6月16日、大成建設技術センター(横浜市)のZEB実証棟が報道陣に公開された。自然光を天井面に照射して室内の明るさ感を向上させたり、燃料電池の低温排熱で水を冷やして空調に活用したりするなど、最新の省エネ技術が随所に配置されている。実証棟には、屋上だけではなく外壁にも三菱化学と共同開発した有機薄膜太陽電池を設置した。
大成の山内隆司社長は「自動車メーカーで言えば、コンセプトカー(試作車)に相当するものだ。今後、経済的に見合うよう検証したい」と意欲を示した。10階程度のビルで、一般のビルに比べて約2割のコスト増なら商業化できるとみる。