携帯電話販売の現場が新年度に入って一挙に沈静化した。NTTドコモ、ソフトバンクモバイル、KDDIの大手3社が繰り広げた最大1人8万円もの高額キャッシュバック(現金返還)が消え、人気機種の「0円」販売もなくなった。ソフトバンクが3月中旬、値引きの原資となる販売報奨金の減額を代理店に通告し、2社も足並みをそろえたためだ。巨額の販促費が利益を圧迫しているうえ、今年度から高速データ通信サービス「LTE」の次世代版「LTEアドバンスト」やLTE通話(VoLTE)の導入に向けた設備投資競争が始まるという事情もありそうだ。
通信事業者の業界団体、電気通信事業者協会(TCA)は3日、移動電話委員会を開き、平成8年から毎月実施してきた携帯電話契約数の公表を中止することを正式決定した。月ごとの契約数の変動が株価にも影響を及ぼすなど過当競争の弊害が出ていると判断。7日に発表する3月末の集計を最後に、四半期ごとの発表に変更する。
年度末商戦では各社が番号持ち運び制度(MNP)を利用した他社からの乗り換え契約者向けの高額キャッシュバックで、家族4人で1人8万円、3人で1人7万円を現金や商品券で提供する顧客争奪戦を展開。長期利用者の売り上げが、短期間で事業者を渡り歩くMNP利用者に流れているとの批判も出ていた。