■東京スカイツリーで地域を発信
--デザイナーとして数多くの作品を手がけてきた
「最近では、東京スカイツリーの展望台に向かうエレベーター4基の基本コンセプトとデザインを担当した。エレベーターの室内には、それぞれ春夏秋冬のアートパネルを施し、エレベーターが動き出すとアートパネルの明るさが変化する仕組みになっている」
--イメージした世界は
「例えば秋のデザインは『祭(まつり)』。1000年の歴史を持つ本所(東京都墨田区)の氏神様、牛島神社の秋のお祭りを表現した。みこしの錺(かざり)職人さんに製作をお願いしたが、本来は立体的なみこし錺を平面の世界で再現するのに苦心した」
「冬のデザインは『都鳥(ユリカモメ)』。富士山を背景に都鳥が舞う姿をあしらったが、地元の押絵羽子板職人さんの技術を生かして、都鳥が未来の世界へ私たちを誘うというイメージを作り上げた。夏のデザインの『隅田川』は隅田川花火大会を江戸切子で再現した。春は桜吹雪が舞う『桜』を描いた」
--地元色に彩られている
「20代半ばに墨田区の産業振興委員となり、地元のものづくりの活性化策を考えてきた。実際に区に提出したアイデアの一つに『カフェ旅館』がある。江戸時代に建てられた旅館の1階に地元や東京の下町の伝統工芸品などを集め、江戸東京の文化を発信できるようなスポットを作る構想だ」
--スカイツリーを通じて表現しようとしたことは
「スカイツリーは近代建築だけではなく、日本や墨田区の新たな象徴となる建築物なので、地域のものづくりや産業、歴史を世界に発信したかった。とりわけ、エレベーターのアートパネルを地域の職人さんに作ってもらうことで、日本のものづくりが可視化されると思った」(松村信仁)
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