介護ロボットの開発に向けた産学連携や異業種間提携が活発化している。大学や企業がそれぞれ独自の技術やノウハウを持ち寄り、事業化のペースを速めることで先行者利益を狙う。介護ロボ市場は立ち上がったばかりだが、急速な高齢化を背景に2020年度には350億円市場に成長するとみられており、競争は白熱しそうだ。
東京理科大学は金型メーカーの菊池製作所と組んで、同大学発のベンチャー「イノフィス」を設立した。工学部の小林宏教授による研究成果「マッスルスーツ」の製品化を目指す。
このスーツは着用者の背筋力をサポート。とくに腰への負担を軽減し、介護現場だけでなく物流や工場など重量物の上げ下ろしを楽に行えるようになる。小林教授は「これだけ力を発揮でき、あらゆる領域で使用できるスーツはない。高齢者が自立した暮らしを行えるようにし、精神的な負担からの解放につなげていきたい」と意欲を示す。
実はこの計画には当初、大手メーカーが参加予定だったが、撤退した。2012年度の介護ロボットの出荷額はわずか1億7000万円。この大手メーカーは事業化リスクが大きいと判断した。
これに対し、菊池製作所は「小さな会社でも、自社製品を武器に新たなマーケットを構築できる」(菊池功社長)と見て、生産を行うことにした。30万~50万円の価格で製品化し、16年度に5000台の販売を目指す。同社は福島県飯舘村に工場があるが、同県南相馬市にも新工場を建設し、量産体制を整えることも視野に入れる。