日系自動車メーカーが輸出拠点としてメキシコへの進出を加速させているのは、日本の通商戦略の出遅れによる競争条件の悪化を回避する「苦肉の策」でもある。ただ産業の裾野が広い自動車各社の海外への生産移転が進むほど、安倍晋三政権が狙う国内の雇用増は難しくなりかねない。国内産業の空洞化に歯止めをかけるには、難航する環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の成否が大きな鍵を握っている。
日本の貿易総額に占める自由貿易協定(FTA)相手国の比率は19%で、米国(38%)、韓国(35%)などに比べ大きく見劣りする。日本は米国とFTAを結んでおらず、米国は日本からの輸入乗用車に価格の2.5%、売れ筋のスポーツ用多目的車(SUV)を含むトラックに25%の関税をかけている。これに対し、日本の輸入車関税率はすでにゼロだ。
2012年に発効した米韓自由貿易協定(FTA)では、韓国からの輸入乗用車の関税が16年、トラックが21年に撤廃されることが決まっている。このままでは、米国市場で日系メーカーが韓国メーカーよりも不利な競争を強いられかねない。