食肉の処理や販売などを手がける宮崎商会(広島県福山市)は、広島県食品工業技術センターが特許をもつ「凍結含浸法」を使って、噛むことや飲み込むことが難しい人向けに、見た目も普通と変わらない食事を楽しめるバリアフリー食の提供を始める。宮崎圭師社長は「食材本来の見た目、風味を損なうことなく、スプーンで簡単につぶせるほど柔らかい」という。試作品では評価を得ており、高齢者向け介護食品や医療用食品として近く売り出す。
--凍結含浸法とは
「食材に酵素を急速かつ均一に浸みこませて柔らかくする技術。一昨年に出会ったのがエポックメーキングとなり、特許を持つ食品工業技術センターと実施許諾契約を結んだ。凍結・解凍した食材を酵素液に漬け込んだまま減圧すると、細胞同士の隙間の空気が抜けて酵素が一気に浸み込む。見た目や風味はそのままで、硬さを自由に調節できる。舌の上に乗せた食材を上あごに押しつけるだけでつぶれるほど柔らかくできる。この食材を温めて皿に移すだけなので、噛む力が弱い高齢者や介護向け食品として提供していきたい」
--見た目が同じとは
「かみ砕いたり飲み込んだりすることが困難な人の食品として、ミキサー食やペースト状の食品などがあるが、肉やにんじん、タケノコなど食材本来の形や色などが変わってしまい、何を食べているか分からない。食欲は見た目なので、一日三食はしんどい。凍結含浸法で作られた食品だと、自然な感覚で普通の食事を楽しめる。食も間違いなく進む」
--反応は
「サンプルを作成し昨年10月から試験的に出荷を始めた。このときに開催された『食品開発展2013』にも凍結含浸食肉素材・製品を出品したが、『よくこれだけ柔らかくできた』と評価された。肉は個体や部位により硬さが違うが、得意とする食肉加工技術を生かし、狙ったターゲットに酵素を均一に浸み込ませることができるからだ。お墨付きを得た格好なので、早期に売り出したい」