ヤマト運輸と総務省(旧郵政省)の長きにわたる対立が転機を迎えている。「信書」の送達を郵便に独占させることを定めた郵便法第5条の撤廃を、宅急便の創始者であるヤマト運輸元会長の小倉昌男氏(故人)が求めて以来のことだ。
「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、または事実を通知する文書」というのが信書の定義である。だから、宅配で送る荷物に便箋(びんせん)一枚でメッセージを入れても、それが信書と判断されれば刑罰の対象となりうる。郵便法では、日本郵便以外の事業者が「信書」を送達した場合には、3年以下の懲役か300万円以下の罰金と定められている。恐るべき「官尊民卑」の背景にあるのは、民間業者には「信書の秘密」の保護が期待できない、という決め付けだ。
この構図は今も変わらない。郵政民営化に伴い、2003年には新たに「信書便」制度が設けられ、建前上は民間開放が実現した。ただし、全国に10万本以上のポストを設置することを義務づけるなどの高いハードルが設けられ、参入の実現例はない。
昨年4月にヤマト運輸は政府の規制改革会議の場で、あらためて信書定義の撤廃や、次善の策としての定義明確化などを訴えた。同会議での議論の結果、総務省はあらためて信書に関する規制のありかたについて検討しなおすことになった。今年3月中にその結論が出る。