■中国販売てこに海外展開加速
全国に約30万人がいると推定される視覚障害者にとって、活字から情報を得るのは至難の業。全ての印刷物に点字があるわけではなく、耳からの情報に頼らざるを得ないケースも多い。視覚障害者向けの情報機器の開発や販売を手がけるアメディアの音声・拡大読書機「よむべえスマイル」は、視覚障害者にも活字の世界を身近なものにしている。
本体のスキャナーのガラス面に印刷物を置き、蓋を閉じた後に読み取りキーを押すと、印刷物の文字を音声で読み上げる。途中で読み上げをやめたり、速度の切りかえなどもボタン操作一つで可能だ。点字印刷物も読み上げてくれる。
緑内障で5歳頃から目が見えない望月優社長は大学卒業後、高校で英語の非常勤講師を務めていたときにコンピューターの勉強を始めた。「もしコンピューターがわかれば、点字でも会議の資料が作れるのでは」と思い、1989年に起業した。
最初の自社製品として、日本初の視覚障害者向け読み上げソフトウエア「ヨメール」を開発し、96年に発売した。画面を見なければいけないマウス操作ではなく、キーボード操作とするなど、視覚障害者の特性を生かした設計思想が評価され、販売を終了した2010年までに累計5000本を売り上げた。
視覚障害者が1人でパソコンにソフトをインストールするのは難しい。また大手ソフトウエア会社による競合もあったことから、ヨメールの設計思想を反映した音声・拡大読書機の開発に着手。初代「よむべえ」を開発し、03年に発売。13年3月に発売した「よむべえスマイル」はこの後継機にあたる。初代にはなかった、手書き文字や点字文字の認識と読み上げ、DVDソフトの再生の機能が加わった。