【北京=早坂礼子】日中経済協会の訪中団(団長・張富士夫トヨタ自動車名誉会長)は20日、国家発展改革委員会と意見交換を行った。21日には工業情報省幹部と会談した後、帰国の途に就く。米倉弘昌経団連会長は20日夜の記者会見で「中国側から前向きな対応を感じ取ることができた。一歩前進だ」と総括したが、習近平国家主席ら国家指導者クラスとの会談は実現せず、会談できた副首相には「日本政府は歴史と現実を正視すること」と要求されるなど、中国側の政治的思惑に利用された感は否めない。
中国の国内総生産(GDP)が日本の4分の1だったころ、日中経協の会談相手は国家指導者があたりまえだった。「経済援助をしてほしい、とにかく会ってくれというスタンスだった」(財界長老)。だが経済成長と歩調を合わせるように、中国政府は日本財界の訪中団との面会者のランクを下げてきている。
一方、中国は最近、対米シフトを鮮明にしている。習近平国家主席は18日、米国のクリントン元大統領と人民大会堂で会談。19日には、汪洋副首相が米貨物大手UPSのデイビス会長と面談した後、日中経協の訪中団と会談し、中国が欧米や韓国との関係を深めていることを例示しながら「日本の対中貿易は減少傾向にある」と指摘した。
財界からは今後も“中国詣で”が相次ぐ見通しだが、有力財界人は「当分、国家指導者に会うのは難しい」とこぼしている。