日本たばこ産業(JT)が30日、発表した工場閉鎖や人員削減などの大規模なリストラ策は、低迷する国内販売を踏まえ、海外に軸足を移す戦略の表れだ。積極的な企業買収により、グループ全体のたばこ販売量は世界3位となり、海外売上高はすでに国内を上回っている。喫煙規制の強化が進み、経営環境の厳しい国内市場からの脱却が、一段と鮮明になる。
「成長分野への投資を最優先したい。課題を先送りしないことが最善だ」
たばこ事業トップを務める佐伯明副社長は同日の会見で、リストラによる固定費の削減分を、海外販売の拡大に向けた施策に投資する考えを強調した。
少子化が進み、喫煙規制が強まる日本市場は、成長分野の枠外にある。同社の調査では、30年前(昭和58年)に66・1%だった成人男性の喫煙率は、平成25年に32・2%と半分以下に落ち込んだ。
さらに今後の消費税率引き上げに伴う値上げが進めば、喫煙人口の減少に拍車がかかる事態も予想される。同社は、消費税率が10%に引き上げられるシナリオを前提に、今回のリストラ策をまとめたという。
ただ、JTグループ全体の業績は過去最大の値上げを行った22年以降、好調だ。26年3月期の連結業績は、最終利益が前期比20・8%増の4150億円と3期連続の最高益を見込む。海外事業の拡大に加え、円安も業績を押し上げる。余力があるうちに大胆なリストラへ踏み切った形だ。
海外へのシフトを鮮明にする一方で、佐伯副社長は国内事業は今後も「収益基盤の中核であり続ける」という。縮小が続く市場で利益を確保し続けるには、コスト削減による利幅の向上が不可欠だ。併せて値上がりに見合う商品開発力も求められそうだ。