標高1千メートルを超える高地ながら、赤道直下で日中の日差しは強く、雨量も多いうえに、土壌も肥沃(ひよく)だ。同農場のユスフ農場長は「すべての要素がバランスよくそろっている」と誇らしげに語る。
同島がオランダ領だった戦前、トラジャ産のコーヒーは欧州の王侯貴族が好んで飲む高級コーヒーとして知られていた。しかし、戦後に農場は放置されて荒れ放題に。いつしか“幻のコーヒー”となった豆を再び本格的に生産しようと、昭和40年代半ばにキーコーヒーがトラジャの農場開拓に乗り出した。「道をつくり、土を耕し、コーヒーの木を植えるところから始めた」と、20代だった当初から農場で働き、当時を知るユスフ農場長は振り返る。
「品質を上げるために研究に研究を重ねてきた」(トアルコ・ジャヤの渡辺隆生産担当取締役)という取り組みは、苦難の連続だった。機械で収穫する農場もある中、パダマラン農場はすべて手摘みで、完熟した実だけを選んで摘む。翌年の収穫に影響が出ないように摘み方に工夫を加えているほか、木を植える間隔も実が最もよく育つよう何年もかけて調整した。