経営再建中の半導体大手ルネサスエレクトロニクスに対し、官民ファンドの産業革新機構と、トヨタ自動車などの企業連合が合計で約2千億円を出資する支援策が固まった。自動車や家電の基幹部品となる半導体「マイコン」の安定供給を確保するのが狙いで、来月にも支援が決まる見通しだ。一時は米投資ファンドによる買収に傾きかけたルネサスの再建策。水面下で何があったのか。
大口顧客が出資
「日本の産業界にとってはいいこと。だが、ルネサスは『生かさず殺さず』になるかもしれない」。経済産業省の幹部は、「日の丸連合」によるルネサス支援の意味をこう解説する。
支援によって、自動車業界を頂点とする部品のサプライチェーン(供給網)は守られる。技術流出も防げ、国内製造業の競争力は維持される可能性が高い。
だが、ルネサスに出資する企業はトヨタのほか、日産自動車、パナソニックなどルネサスがマイコンを供給する大口顧客だ。株主の意向が強く働き、ルネサスがマイコン供給の“下請け”から脱却できなければ、低収益体質はそのまま残ることになりかねない。