それでも合意拒否を貫くある経営者は「国の認可が必要な家庭向け料金は後回しで、手っ取り早く企業向けを値上げして収入を確保しようとしている。大企業なら価格交渉をしたり自家発電設備を増やすなどの選択肢もあるが、中小零細企業にはそんな体力はない。やり口が汚い」と憤る。
東電は事実上の地域独占で電力供給を続けてきた。このため、多くの顧客は東電以外に選択肢がなく、値上げを受け入れざるを得ない。だが、値上げ分を価格転嫁できなければ経営悪化は避けらない。
電気が止められる恐怖と、コスト上昇を転嫁できない恐怖。東電は生き残りのために値上げを決断したが、多くの企業が生き残りのために2つの恐怖と闘っている。(田辺裕晶、高山豊司)