「業界の淘汰(とうた)に直結する」。危機感を抱いた電炉業界は一致団結して値上げに強く反対した。だが、4月下旬に「(最大手の)東京製鉄が契約を更新したらしい」との噂が広がると、雪崩を打ったように各社は契約を更新した。値上げに抵抗し電力供給が止められれば、事業が成り立たないだけに抵抗には限界があった。結局、東電管内に工場を持つ15社は5月下旬までにすべて契約を更新し、1キロワット時あたり一律2円58銭の値上げを受け入れた。
大手電炉の幹部は「電気代が決まらないと、収益計画も、工場の操業計画も、鋼材製品の値段も決められない」と実態を語る。東電以外に電力を安定供給してくれる業者はなく、あきらめの表情を浮かべた。
2つの恐怖と闘う企業
東電はいま、値上げに合意せず契約が切れた場合にも電力供給を続けている。本来は契約が切れた後、約50日後に電力供給を止められるが、枝野幸男経済産業相から「機械的な対応は許されない」と批判を受けたためだ。しかし、いつまで電力供給を続けるのか東電は明確にしておらず、供給停止の恐怖は消えない。
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