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クリスマスケーキにおしぼり…原油価格不透明も影響じわり

 原油価格の高騰に各方面から悲鳴が上がっている。ガソリンの値段上昇が家計を直撃する中、季節を彩るクリスマスケーキや外食に欠かせないおしぼりなどにも影響はおよび、もうけを削りながら耐え忍ぶ業者もある。日米中など主要消費国が備蓄石油の協調放出を決めたほか、新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン株」の感染拡大で燃料需要が減るとの予想もあるが、先行きは見通せない。(小川原咲、桑村大)

ビニールハウスにも

 「危機感はあるが、ケーキは値上げできない。我慢し続けるしかない」。洋菓子店「パティスリーリスボン」(大阪市都島区)のオーナーパティシエ、山下理弘(のりひろ)さん(44)は苦しい経営実態を明かす。

 例年であれば、一番の書き入れ時のはずのクリスマスシーズン。だが今年はケーキに欠かせないイチゴなどの原材料価格が上昇し、利益の圧迫が予想されているという。

 背景にあるのは原油価格の高騰だ。イチゴのビニールハウスの暖房設備には大量の重油が使われる。燃料高はハウス栽培の野菜や果物の価格に直結する。

 同店では通常、イチゴ1パックを約1千円で仕入れるが、「今後1500円~2千円近くになるとの話もある」(山下さん)。小麦粉や卵、砂糖などのケーキの原材料費も軒並み高騰しているという。

 例年200個近くのクリスマスケーキを販売し、今年も同数の販売を見込んだ中での原油高騰。利益が圧迫され、経営もギリギリだ。政府の備蓄石油放出には期待を寄せつつも、「効果は不透明で、不安な日々は続きそうだ」と話す。

魚も売れないのに

 「コロナと原油高騰のダブルパンチだ」。大阪府岸和田市の府鰮巾着網(いわしきんちゃくあみ)漁業協同組合の岡修(おさむ)組合長(71)は嘆く。

 現在、カタクチイワシやその稚魚のシラス漁に励む同組合にも原油高は直撃。担当者によると、漁船の燃料の重油は以前は1リットル50円前後で推移したが、現在は同90円前後にまで上昇した。

 長引くコロナ禍の影も無視できない。岡組合長によると、休業・閉店する飲食店が増えた影響で魚の価格が低迷。岸和田漁港で水揚げされるシラスの場合、コロナ前にはおよそ25キロで1万円以上していた価格も、現在は半値の5千~6千円程度にとどまる。

 岡組合長は「魚は売れないのに燃料は高い、となれば漁にも出られない。原油高は漁師にとって死活問題」と訴え、手厚い支援を求めた。

蓄え切り崩す

 飲食店で手をふいたり、疲れを癒したりするために提供されるおしぼりにも影響が出ている。

 おしぼりを包むポリ袋は石油製品だ。大阪府東大阪市のレンタルおしぼり業者「ら・しーく」は、ポリ袋を卸す2業者から2割程度の値上げを打診されているといい、松本龍男会長(76)は「(原油の)値上がりを実感している」と話す。

 ガソリン価格の上昇も痛感している。コロナ前に週5、6日の稼働で月約25万円に達していた配達車のガソリン代。現在は以前よりも稼働日が少ないにも関わらず、ガソリン代はほぼ変わらない。

 飲食業界の厳しい現状を踏まえ、同社ではおしぼりのレンタル代は値上げしない方針というが、松本会長は「さらに原油が値上がりすると厳しい。これまでの蓄えを切り崩しながら乗り切るしかない」と話した。