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気がつけば時速270キロ レース仕込みのランボルギーニ「ウラカン」に試乗

SankeiBiz編集部

 ドライバーの感性に訴える走りと、美しいデザインでスーパーカーの歴史を切り開いてきた高級車ブランド、ランボルギーニ。「カウンタック」「ミウラ」など革新的な名車を生み出し、いまも進化を続けるラインアップに新たな1台が登場した。モータースポーツで培った技術を凝縮し、走りを追求した公道仕様のスーパースポーツカー「Huracan(ウラカン) STO」だ。昨年11月の発表からそのパフォーマンスへの期待が高まり、今年8月に初年度生産分の完売が明らかになった同車のメディア試乗会に参加し、ランボルギーニの走りへの情熱を反映した底知れない実力を体験した。

 サーキットで得た勝利と経験に基づき開発

 10月上旬に開かれた試乗会当日は秋晴れの空が広がるなか、会場の富士スピードウェイ(静岡県小山町)に多彩なカラーのウラカンSTOが6台並んだ。レースを意識させる戦闘的な外観がサーキットになじみ、早くも胸が高鳴る。

 V型10気筒エンジン搭載のウラカンは2014年の登場以来、高出力モデル「ペルフォマンテ」、空力性能を向上させた「EVO」と進化を続けてきた。モータースポーツの世界でもレース仕様車「GT3 EVO」が米デイトナ24時間で3連覇(GTDクラス)を達成するなど実績を重ね、誕生したのが究極の公道仕様モデルともいえるSTOだ。

 ランボルギーニのワンメイクレース「スーパートロフェオ」の認証(イタリア語でオモロガータ)を意味する車名の通り、「われわれがサーキットで獲得した勝利と経験に基づいて開発した車だ」(ランボルギーニ日本法人代表のダビデ・スフレコラ氏)。

 試乗はその実力を確かめるため約4.5キロのコース4周を2回と、最後に2周の計3セットが用意された。インストラクターの先導車に続きコースに入ると、異次元の体験にあっという間に時間が過ぎてしまった。

 最も印象に残ったのは、驚異の加速力だ。世界有数の長さ1.5キロに及ぶホームストレートに入りアクセルを踏み込むと、身体がシートに押し付けられるほどの勢いでみるみるうちにスピードアップ。インストラクターからは無線で「ストレート後半の看板辺りから減速」と指示を受けたが、ホームストレートの半ばあたりでメーターは時速270キロ超に達し、限界の見えないパフォーマンスに怖気づきアクセルを戻した。

 時速0キロから100キロまでの加速にかかる時間が3.0秒、200キロまでが9.0秒というパワーの本領はサーキットでこそ発揮されると実感した。外装パネルの75%以上をカーボンファイバー製にしたうえ、ボンネットとフェンダー、フロントバンパーを一体化するなど部品の結合部分を減らして軽量化を進め、乾燥重量は1339キログラムとペルフォマンテより43キログラムも抑えた成果がみられる。

 最大420キロのダウンフォースが生む走行安定性

 最大640馬力のモンスターマシンの実力を垣間見る一方、空力を最大限に生かした走行安定性と、新開発のブレーキシステムの制動力にもモータースポーツのDNAを感じた。

 コースは後半の緩やかに曲がる「300R」から急減速し、タイトなコーナーが続く区間に入る。大型のリアウィングなどが生み出す確かなダウンフォース(空気が車体を下方に押す力)に安心感を抱きつつ、アクセルを踏み込み300Rを駆け抜けると気分はレーシングドライバー。しかし、コーナー侵入時にブレーキを踏み込むと、制動力の高さに減速しすぎてしまう始末で、レース気分に浸る時間は一瞬で過ぎ去った。高性能マシンを自在に操るには相応の腕が必要なようだ。

 この空力の秘密は一新した外装デザインにある。STOは3段階の調節が可能なリアウィングを装着し、フロントボンネットには新たに大きなエアダクト(吸気孔)を設置。車体下部の空気が上部に抜け、ダウンフォースを高めるとともに、エンジンの冷却効率を上げた。結果、ダウンフォースは最大420キログラム(時速280㌔走行時)に達している。

 さらに、ブレーキはカーボンセラミックを使った新開発のシステムを採用し、制動力は従来の同素材を使ったものよりも25%向上したという。

 試乗を終え、最初に感じたのはサーキットでこの車に乗れたことへの喜びだ。ランボルギーニのモータースポーツ部門「スクアドラ・コルセ(イタリア語でレーシングチームの意)」の伝統を最も純粋に受け継いだモデルというSTOは、性能以上にドライバーの挑戦心を刺激し、より高い領域へ引き上げてくれる魅力があった。

 この日はサーキット走行だったが、公道モデルとして、余力を残しながら高速道路やワインディングを走らせるとどんな気分が味わえるかにも興味がわいた。4125万円という価格を考えるとぜいたくな夢想だが、そんな好奇心や挑戦心が膨らむ刺激的な1台だった。

SankeiBiz編集部 SankeiBiz編集部員
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