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ワクチン“デマ撃退”に称賛も…お年寄りから批判のナゼ 東京・小金井市の憂鬱

SankeiBiz編集部

 官民とも新型コロナウイルスとワクチンの誤情報対策に取り組む中、東京都小金井市の公式サイトが「キレッキレで痛快だ」などと注目を集めている。同市の医師会のメッセージとして、よくある質問や誤情報をQ&A形式で掲載したところ、分かりやすくて、インターネットで広がる突飛なデマをばっさり切っていると会員制交流サイト(SNS)などで評判になったのだ。しかし、意外なことに、市役所には市民からの「お叱りの声」が寄せられたという。

ネズミが2年で死んだ→寿命です

 《Q4:ワクチン接種したネズミが2年で死んだと聞きました》

 《A4:ネズミの寿命は2年です》

 《Q10:漠然と心配です》

 《A10:ワクチン接種しないことによる感染リスクや社会・経済活動の低迷の方が明確に心配です》

 《Q17:5Gに接続される、磁気をおびる》

 《A17:そのような事実はありません》

 大きな評判を呼んだQ&Aは、同市の医師会が作成したものだ。医師会は今年3月から、新型コロナウイルスとワクチンの理解を深めるのに役立つ情報を公式サイトで発信しており、それと同じものが市役所の公式サイトにも掲載されていた。

 同市新型コロナウイルス感染症対策担当課の石原弘一課長は「月に2回、市と医師会と薬剤師会で会合を開いて情報を共有しています」と話し、医師会のメッセージは市の姿勢とも合致すると説明する。

 この内容は6月下旬に公開され、今月11日ごろになって「自治体がきっぱりとデマを否定している」「多くの人が読むべきだ」などとTwitter(ツイッター)で評価された。さらに12日、ネットで強い発信力を持つ河野太郎行政改革担当相のアカウントが拡散したことで、より広い範囲のネットユーザーが目にするようになった。

デマの存在自体が「信じられない」

 だが、ネット空間の称賛が十分に市役所まで届いたとは言えないようだ。石原課長は「(市役所に)あまり喜びの声は寄せられませんでした」と明かす。市によると、年配の市民から「そんなデマがあるなんて信じられない」「話を捏造(ねつぞう)しているのではないか」「ワクチンに否定的な考えを持つ人を揶揄(やゆ)しているように感じる」といった声も寄せられたという。

 確かにデマにしても荒唐無稽だが、ワクチン注射で体内にマイクロチップが埋め込まれ、次世代通信規格の5Gで人体が操作されるという根拠不明の論が米国で問題化したとも報じられている。

 実験用マウスの寿命のデマについては、聞き手が科学的知識を持たないのにつけ込んで不安をあおるジョーク、詭弁(きべん)の類とも捉えられるが、河野氏や厚生労働省が打ち消しに時間と労力をかけていることや世相を考えれば悪質なデマと判断されても仕方がないだろう。

 ネット上の情報は玉石混交で間違ったものも少なくない。普段からネットを使っていない年齢層では、でたらめな情報に流される機会が少ない代わりに、玉石混交の中のいびつな“石”に触れてひどく驚いてしまうこともあるのかもしれない。

 「市役所の仕事でお叱りを受けることはあっても、お褒めのお言葉をいただくことはあまりないのです」

 石原課長はこう語る。65歳以上の市民の90%以上が2回目の接種を終えたため、ほかの世代がワクチンを受けやすいように体制を整え、10月中には希望者全員の接種を終えたいとしている。

Twitterは「5ストライク制」導入

 SNSを運営するIT企業などもユーザーが誤情報を目にしないよう対策を続けている。

 Twitterは昨年3月、新型コロナウイルスに関する間違った治療法や社会不安をあおる内容の投稿については、冗談であったとしても削除要請をすると発表した。その約1年後には8400件以上の投稿を削除したと明らかにしている。

 また、同社はTwitterに投稿された誤情報の程度など数値化し、累計ポイントに応じてアカウントの一時停止や永久凍結などの処分を課す「5ストライク制」を導入。治療に関するデマや悪意のある“コロナ陰謀論”の投稿が削除された場合は1回で2ストライクがカウントされる仕組みで、3回目の削除で上限の5ストライクを超えて“退場”になる。

 Facebook(フェイスブック)も同社のSNSと傘下のInstagram(インスタグラム)で、読者に危害を及ぼす恐れがある1200万以上のコンテンツ(今年2月時点)を削除した。動画メディアではGoogle傘下のYouTubeが、ワクチンに関する間違った主張や接種証明書を偽造・販売する動画に対処するとしており、今月までの削除件数は7万5000以上に上るという。

 一方、実験用マウスの誤情報が猫などの別の動物に置き換えられて拡散されるなど、ウイルスのようにデマも“変異”する向きがみられ、接種を嫌がる傾向の若者世代をさらにワクチンから遠ざけてしまう恐れがある。「インフォデミック」(偽情報の急拡散)との戦いはまだ続きそうだ。

SankeiBiz編集部 SankeiBiz編集部員
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