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日本損保協会の船曳真一郎会長、リスク別水災保険料「公平性と持続性が重要」

 --火災保険の水災補償で地域ごとの水害リスクに応じて保険料を上下させる制度の導入が検討されている

 「リスク実態に合わせて保険料を決めるという単純な制度にはならないと思っている。リスク細分をしたら、料率区分ですごい差がつくかもしれないし、著しく高リスクな場合は保険の引き受け自体ができなくなるかもしれない。リスクの高い地域の人ほど入りにくくなる制度は健全な保険制度ではない。公平性と保険制度としての持続性をどのように担保するかがポイントになる」

 --“身代金”を要求するサイバー攻撃が世界的に増えている。一方、国内ではサイバー攻撃の損失を補償するサイバー保険の加入率が低い状況が続いている

 「協会が実施したアンケート結果によると、中小企業の加入率は7%だ。加入していない企業に加入していない理由を聞くと、保険で何が補償されるかなどをよく知らないから入るきっかけ・動機を持っていない。ただ、起きてからではなく、起きることに備えて(保険を)提供していくのは、保険の価値であり、その価値を理解してもらう努力は保険会社側にある。協会としてはサイバー攻撃にどのようなリスクがあり、どのような状態になる可能性が高いかを周知し、普及に努めることが重要だ」

 --サイバー保険で要求された身代金の支払いは補償すべきか

 「(身代金を保険で迅速に支払う企業が増えれば)リスクを誘発するとの指摘もある。今、身代金を払って営業を再開した会社はアメリカで公聴会に呼ばれ、なぜ身代金を補償する保険に入っていたのかといった理由などの証言を求められる。何が最も効率の良い手段なのかが論議の対象にもなっている。補償するのが正解なのか、しないのが正解なのか、単純には決められない」

 【プロフィル】ふなびき・しんいちろう 神戸大学経営卒。昭和58年に住友海上火災保険(現三井住友海上火災保険)入社。三井住友海上経営企画部長、取締役専務執行役員、取締役副社長などを経て、令和3年4月から現職。同年6月30日付で日本損害保険協会会長に就任。東京都出身。