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評価不信で“グルメサイト離れ”加速 店単位からメニュー別“一品”評価の時代に

SankeiBiz編集部

 「飲食店に課金させるグルメサイトは信用できない」。ネット上ではこうした厳しい見方が広がり、グルメサイトの点数やランキングを信じない人が増えている。民間企業の意識調査でも、飲食店側も6割がグルメサイトの評価を気にしていないことが判明。信頼度の低下から“グルメサイト離れ”が進んでいる実態が浮き彫りとなった。一方、ユーザー数を伸ばしているグルメサイトもある。スマートフォンアプリの「SARAH(サラ)」だ。従来のグルメサイトと何が違うのか探った。

 客も店も「評価」に不信感

 「大手グルメサイトで評価の高いお店でも、ポテトサラダが美味しいかどうかまでは分かりません。きっかけは私の好きなポテサラでした」

 スマホアプリ「SARAH」を運営するSARAH(東京都台東区)の社長、高橋洋太さんがアプリ開発の経緯を振り返る。ポテサラと言っても、ジャガイモをつぶして口当たりをなめらかにしたものもあれば、ジャガイモがごろごろ入った食べ応えのあるものなどさまざま。逸品のポテサラを探し当てたいとの思いから、SARAHでは単品のメニューごとに検索できるようにしたという。ポテサラだけでなく、レバーペーストやガーリックトーストといった料理の“脇役”メニューも検索できるのが特徴だ。「店の雰囲気とかは関係なく、おいしいかどうかでどうしてもランキングを作りたかった」(高橋さん)という。

 飲食店を探す際に入り口となるグルメサイトは今、厳しい状況に置かれている。全国約7000店の飲食店のデータを持つテーブルチェックの意識調査によると、1年前と比べグルメサイトの利用が「減った」「利用・閲覧しなくなった」と回答した人は42.8%に上る。グルメサイトの点数やランキングについても28.5%が「信頼していない」と回答。前回調査より2.4ポイント増加した。一方、「店選びの基準になっている」とした人は12.0%にとどまり、過半数の52.5%の人が「あくまで情報源の一つ」と割り切っている。

 さらに深刻なのは飲食店側の反応だ。グルメサイトのユーザー評価を「気にしない」とした店舗は57.1%に上り、「間違っている」(6.0%)、「信用していない」(15.5%)という冷めた見方も2割を超えている。

 グルメサイトの評価に懐疑的な見方が広まるの中、SARAHの投稿数は累計70万件と堅調に推移。月間ユーザー数もコロナ禍前(2020年2月)の約60万人から約3倍に増加しているという。個人ユーザーの純粋な評価であるという点と、誰もがSNS感覚で投稿できるうえ、単品で検索できる手軽さが支持されているようだ。だがそれだけではない。SARAHではコンビニエンスストアの弁当やデザート、スーパーマーケットの総菜なども検索できるため、コロナ禍で調理済みの食品を自宅で食べる「中食」需要が伸びたことも一因という。

 おいしい料理の「備忘録」

 SARAHに登録した個人ユーザーは飲食店の料理をそれぞれ5段階で評価する。料理の写真には簡単な感想も添えられる。評価の基準は、単純においしかったかどうか。立地や個室の有無、店内の雰囲気などで評価が大きく左右されることはない。

 「食べログ」「ぐるなび」「ホットペッパー」の3大グルメサイトはいずれも店舗別に表示されるが、SARAHはメニュー単位となっている。試しにエリアを指定して検索してみると、シャトーブリアンステーキを使った「シャトーブリ飯」という料理が人気ランキングの上位に表示された。まず目に入るのは、どんな料理が人気で、評価が高いのか。興味を抱いた料理の写真をクリックすると、店名や所在地などを確認できた。「店→料理」ではなく、「料理→店」というアクセスがユニークだ。

 ビッグデータで“食のトレンド”をキャッチ

 いつどこで何を食べ、どのくらいおいしかったか-。料理への評価を投稿するユーザーにとって、「SARAHは備忘録のようなもの」(高橋さん)だという。フェイスブックやインスタグラムに自分の食べた料理の写真を投稿するような感覚に近いかもしれない。1つでも多くの「いいね!」を得たい、他者から認められたいという「承認欲求」がSNS投稿の一つの原動力になっているとすれば、SARAHは「自己満足的な成長欲求」(同)が投稿の動機付けになっているという。

 「食べたものすべてをSNSに投稿するのは、(見る人によっては)嫌味になることもあります。そこで、SARAHでは一定の数ごとに『カレーライスを10皿食べました』といった画像が自動生成され、その画像をSNSに投稿できます」と高橋さん。SARAHに食べた料理の評価や感想を投稿すると、ジャンルごとに分類され、自分独自のランキングも作成できる。評価やレビューをたくさん投稿している古参のヘビーユーザーだけでなく、新規ユーザーの投稿も注目されるように工夫しているほか、「うどんだったらこの人、ギョウザならこの人」とユーザーが脚光を浴びる「仕掛け」(同)も施しているという。

 投稿された膨大な口コミからメニューごとに至極の一品を表彰する「ジャパン・メニュー・アワード」が選ばれるが、「一皿」ごとに評価できるSARAHだけに部門が細かく分かれており、アプリ開発のきっかけとなったポテサラはもちろん、クリームパンやかき氷までジャンルは多岐にわたる。

 「今、どこでどんなメニューが人気なのか。SARAHに投稿されたデータを分析し、可視化できれば、食のトレンドが見えてきます」

 高橋さんはグルメサイトの一歩先を見据える。それは、投稿された膨大なビッグデータの活用だ。「FoodDataBank」というサービスでは、投稿データからトレンドを見つけ出し、どういった年齢層に人気なのかターゲット情報を分析できるという。すでにコンビニ大手や、食品メーカー、外食チェーンなどが活用しており、例えば、プリンを開発する場合なら、「食感」というキーワードで絞り込めば、硬めでなめらかな食感のプリンのニーズが高いことが分かるという。

 集計が必要なアンケートとは異なり、企業が瞬時にトレンドをつかむことができるのも利点だ。飲食店のメニューをスマホで見られる「SmartMenu」では、データを活用して来店者ごとにレコメンドを表示させることもできる。

 今後は料理レシピのデータを取り込み、うまみや苦み、酸味など細かいデータも蓄積することも考えているという。通信技術を活用した「フードテック」は、政府が成長分野と位置付ける食の先端技術だ。高橋さんはこう力を込める。

 「フードテック先進国のアメリカや中国に比べると、日本の取り組みは出遅れていますが、『食×テクノロジー』の分野は日本企業が世界に価値を提供できるものだと思っています」

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