新型コロナウイルス感染拡大の影響が長引く中、就職活動を進める大学生らの考えにも変化が起き始めている。他の業界を志望していた学生らがIT業界に関心を示しているのだ。政府の試算では2030年に最大79万人のIT人材が不足する見通しだが、この需要ギャップを埋める一歩になるのだろうか。
求められる堅実さ
楽天グループは来春卒業予定の学生に「仕事の魅力」「会社の魅力」「雇用の魅力」「採用活動の魅力」「志望職種」について聞き、IT企業201社の人気度を数値化。「IT業界就職人気企業ランキング」を作成した。
その結果、1位になったのは今年もNTTデータだった。12年連続のトップだ。楽天は4月、IT企業に限定しない人気企業ランキングを発表しており、ここでもNTTデータは伊藤忠商事に次ぐ2位と高い人気を誇っている。
楽天の広報担当によると、今回の調査でNTTデータはすべての項目で高い評価を得ており、特に「安定していそう(会社の魅力)」「福利厚生がしっかりしていそう(雇用の魅力)」と支持する意見が多かったという。会社の安定感や福利厚生の充実などの堅実なイメージが“王座盤石”の結果につながったとみられる。
NTTデータは今月11日、ゴルフのマスターズ・トーナメントで日本男子として初めてメジャー制覇を果たした松山英樹選手と3年のスポンサー契約を結ぶと発表したばかり。就活学生だけでなく、広い世代に向けたイメージアップ戦略にも隙がない。
2位以降は楽天、富士通、住友商事グループのSCSK、伊藤忠テクノソリューションズが続いた。トップ5は昨年と同じ顔触れだ。「GAFA(ガーファ)」と呼ばれる米IT4社の中ではグーグルが6位にランクイン。通販大手アマゾンの子会社でクラウド事業を手掛けるアマゾン ウェブ サービス(AWS)は18位だった。
アップルとフェイスブックは調査の対象外だった。楽天の広報担当者は「日本での採用活動の規模なども基準としているため」と説明している。GAFA以外の大企業ではヤフーが8位、LINEが9位、日本IBMが15位、日本マイクロソフトが44位だった。
今回の調査について広報担当者は「新型コロナウイルス感染拡大の影響で採用を中止する業界もある中で、業績が好調で将来性がある分野としてIT業界が認知されつつある」と述べ、他の業界を志望する学生が、認知度の高いITメーカー系の企業に注目していることを特徴に挙げた。ITメーカー系では日立システムズが昨年の30位から今年は21位に浮上。パナソニックシステムソリューションズジャパンは35位から24位に、NECソリューションイノベータも59位から28位に、それぞれ順位を上げている。
残業を減らす働き方の推進や、キャリア形成をしやすくなったことなどの良いイメージが醸成されつつあることも、IT業界が注目を集める一因のようだ。
今回の調査は昨年9月16日から今年の3月26日にかけて、楽天が運営する就活情報サイト「楽天みん就」などで行われた。対象は2022年卒業予定の大学生と大学院生。有効回答人数は1469人だった。