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田辺三菱製薬、新型コロナワクチンの早期国内供給を目指す

 田辺三菱製薬が、カナダで開発中の新型コロナウイルスワクチンを早期に国内供給する方針であることが分かった。上野裕明社長が産経新聞のインタビューに答えた。カナダ子会社が開発中のワクチンは今月、カナダと米国で最終段階の治験(臨床試験)に入っている。9月までにカナダでの製造販売承認を取得し、その後、国内でも供給することを目指す。また、上野社長は、2024年までに10億回分が製造できるよう、投資計画を進めていることも明らかにした。(安田奈緒美)

 ワクチンは、同社が13年に買収したカナダの子会社「メディカゴ」が開発を進めている。今月、カナダと米国を含む世界10カ国、地域で3万人規模の治験をスタート。カナダ政府とは最大7600万回分の供給で合意しており、今年中の供給開始を目指す。生産拠点は米国とカナダにあり、今年末までに8千万回分の製造能力を確保。24年までにさらに10倍以上へと能力を拡大する。

 国内供給に関して上野社長は「なるべく早く日本に持ち込みたい」と話し、現在、規制当局と調整を進めているとした。「海外での大規模治験の速報結果が6月ごろに分かる見通しで、その進捗(しんちょく)をみながら、どのタイミングで日本で治験を開始するか考えたい」としている。

 現在、国内で承認済みの米ファイザーや承認申請中の英アストラゼネカ、米モデルナのワクチンは、海外での大規模治験の結果があるため、国内では治験の対象が数百人という小規模ですみ、迅速な承認審査が可能となっている。田辺三菱のワクチンも同様に、海外での大規模治験の結果を活用したい考えだ。

 一方で、国がすでに海外製薬企業と供給契約を結んでいることから、「今後、私たちのワクチンの需要があるのかについても見極めていく。そのあたりも国と調整を進めていく」と話した。

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 メディカゴは、タバコの葉を使って、植物由来のワクチン開発を進めている。葉にウイルスの遺伝子情報を含む液体を染み込ませ、葉を育てる過程でワクチンのもとになる粒子(VLP)を培養して、刈り取った葉から抽出・精製してワクチンを作る。5~6週間という短期間で製造できるメリットがあるという。