現場の風

国際石油開発帝石 常務執行役員アブダビ事業本部長 藤井 洋さん(63)

 --日本の主要な原油調達先であるアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ首長国に通算で約19年駐在した

 「アブダビでは今日でこそ中国や韓国の石油開発会社も参入しているが、昔から欧米の石油メジャーが強い。日本の石油開発会社の技術力や運営力はメジャーと雲泥の差があり、それでも食らいつくというやり方だった。特にメジャーがすごいと感じたのは、油田権益に関する決定権を持つアブダビの王族や政府への食い込み方だ」

 --国際石油開発帝石は2018年に、アブダビ海上油田では最大規模の「下部ザクム油田」の権益を取得した

 「歴史のある油田で、原油の埋蔵量や生産量はとても大きい。この油田の開発に関する提案を出す必要があった。当社は、同じ地点にあるが油層が異なる『上部ザクム油田』の権益も保有しており、上部ザクム油田との相乗効果を発揮して開発すれば大幅なコスト削減と増産が実現できると訴えた。それがアブダビ側に評価された」

 --もともと国際帝石は旧アブダビ海上鉱区で12%の権益を持っていたが、権益期限を迎えた後、18年の新たな権益の取得では10%に低下した

 「(アブダビ側は)10%が最大限だという姿勢を示していた。ただ、当社はこれに先立って、15年にアブダビで陸上油田の権益の5%を獲得しており、これが大きな意味を持つ。陸上権益5%に海上権益を合わせることで従来と比べてよい事業環境をつくることに成功した」

 --購買力を高める中国やインドも、新規の油田権益の獲得に向けてアブダビ側への働き掛けを強めていた

 「中印の原油輸入量は桁違いで増えている。この海上油田の権益の扱いは、アブダビで残っていた最後の大型案件だった。中印の特徴は、トップが素早く動いて交渉に当たる点だ。ただ、日本側はUAEのアブダビ首長国のムハンマド皇太子との良好な関係も支えとなった」

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 ふじい・ひろし 慶大法卒。1980年ジャパン石油開発入社。同社のアブダビ事業部事業企画グループリーダーや取締役アブダビ支店長などを経て2018年6月から現職。ジャパン石油開発社長も兼務。富山県出身。