中小企業へのエール

GoToより今なすべきこと 当たり前見直すことで生まれる大市場

■京都先端科学大・旭川大客員教授 増山壽一

 長引く新型コロナウイルスの影響により、本来この秋から年末に向けて、行楽、忘年会シーズンなどで活況を呈するはずの観光関連や飲食業界は思うようにかじを取れない。そのような中、政府の緊急対策である「Go To キャンペーン」には経済のカンフル剤として大きな期待が寄せられている。

 年を越せるか越せないかの瀬戸際にある事業者には、まさに穀雨である。ぜひともこの制度を、最大限活用して生き延びてほしい。

 ただ、実際Go To キャンペーンを試してみて思うことは、電子クーポンや電子ポイントでの還元となるため、参加できる事業者が大幅に狭まってしまっていることが残念だ。

 例えば、Go To トラベルで旅行代金の15%相当額分が付与される「地域共通クーポン」は、紙でのクーポンでなく、電子クーポンが付与された場合、郊外へ行くと使える店舗が少なくなっている。

 利用可能店舗が専用電子地図に表示され、一見すると便利なように見えるが、よく見ると紙でのクーポンだけ利用可能となっていて、電子クーポンはほとんど使えない。利用できる期限も宿泊翌日までということもあり、仕方なく東京に戻って大手ドラッグストアで使うしかなく、地方振興とは程遠い。

 Go To イートも、電子ポイントを使える店は「ぐるなび」などの大手予約サイトを通じてのみで、ポイントもサイトのポイントとなり、これに参加する事業者は主に大手居酒屋チェーンとなる。国からあてがわれる支援スキームだけを前提にこの難局を脱しようとすると、制度に無理に合わせようとして、むしろ事業者の生き残る体力を奪ってしまっていないか。

 そんな中、町を歩いているとペット関連のビジネスが堅調であることを実感する。人は自宅に巣ごもるとペットを飼う人が増え、ペットにお金をかけるのである。しかし、日本のホテルや旅館は、犬や猫と一緒に泊まれる施設がほとんどない。欧米ではまったく逆で、しつけのできているペットを連れて旅行をすることは、家族の一員として当たり前というのが原則となっている。レストランにおいても、欧米ではペットを同伴できる店がいかに多いことか。

 政府の「Go To キャンペーン」はいつか終わる。この支援策で一息ついている間に、これまで日本で当たり前と思っていたことを抜本的に見直してみると、そこにはものすごく大きなマーケットが存在しているのである。

【プロフィル】増山壽一

 ますやま・としかず 東大法卒。1985年通産省(現・経産省)入省。産業政策、エネルギー政策、通商政策、地域政策などのポストを経て、2012年北海道経産局長。14年中小企業基盤整備機構筆頭理事。旭川大学客員教授。京都先端科学大客員教授。日本経済を強くしなやかにする会代表。前環境省特別参与。著書「AI(愛)ある自頭を持つ!」(産経新聞出版)。58歳。