三菱自、拡大戦略あだ パジェロ完全撤退
三菱自動車は27日発表した3カ年の中期経営計画で、国内工場の一部閉鎖も含む大幅な固定費削減に追い込まれた。
「新型コロナは関係なく、もともと当社の構造上、メガマーケットでの拡大戦略に無理があった」
加藤隆雄最高経営責任者(CEO)は電話会見で、スポーツ用多目的車(SUV)「パジェロ」撤退について、新型コロナウイルスの影響を完全に否定したうえで、過去の計画の見極め不足を率直に認めざるを得なかった。
かつての「RVブーム」を牽引していたパジェロだが、国内向けはすでに昨年に終了し、輸出向けのみ生産中。岐阜の工場はSUV「アウトランダー」やミニバン「デリカD:5」も生産しているが、稼働率は低下していた。同工場の約900人(今年3月末時点)の従業員は配置転換などで対応する方向。
カルロス・ゴーン被告が三菱自の会長も兼務するなか、2017年に策定されたのが“ゴーン流”の拡大方針のもと、3カ年で「販売台数と売上高を30%以上増」とうたった前の中期経営計画。主力の東南アジア、ホームの日本に加えて米中などでも拡大を目指すいわば「全方位戦略」で、19年度の世界販売台数目標を130万台としていたが、結果は112万7000台にとどまった。
未達成の悪影響がさらに大きかったのが、コスト最適化計画だ。開発費や生産・物流コストも含む「ものづくり総コスト」を年1.3%減としていくと掲げたが、台数拡大優先のなか実際には減るどころか「あらゆる経理項目で拡大」(加藤氏)した。人件費や開発費も含めた固定費は19年度には、5年前の1.3倍に膨張。販売台数は確かに以前よりは増えたが、収益構造は悪化する結果となった。
今後は東南アジア諸国連合(ASEAN)に経営資源を集中、中国も含め環境対応車のラインアップを強化して再建を図る構えだが、加藤氏も「コロナ影響が将来どうなるかわからない」と認める。まずは来年度の黒字化を目指すが、実現は険しい道のりとなる。(今村義丈)