講師のホンネ

おせっかいは卒業 

 伊豆はるか

 頼まれもしないのにアドバイスしてくるおせっかいな人はどこにでもいる。余計なお世話だと一蹴してしまったら、ストレスのたまるこの経験が無駄になってしまう。そういう時は、自分を振り返る絶好のチャンスと捉えよう。

 あなたは、良かれと思って「これはいい、あれはだめだ」と、一方的にアドバイスしてしまうことはないだろうか。もしそうだとしたら気をつけてほしい。相手のためを思って一生懸命やっていることが、逆に嫌われ、迷惑だと思われる原因になってしまう可能性が高いからだ。

 知識豊富で、役に立つことをたくさん知っているのに、伝え方次第で全く伝わっていないどころか、逆にめんどくさいと思われている人は多い。そのような、非常にもったいない場面を見る度に思うことは「ほんの少し相手に関心を持つだけで、全く違う結果になる」ということだ。

 一方的なアドバイスは、ただの自己満足であり相手を無視した行為でもある。どんなに有用な情報でも、相手にとって、今、関心がないことや、今、必要としていないことなら、その人にとって価値はない。言いたいことを口にするより先に、まずは相手が必要としている情報や、それを受け取りたいタイミングをはかることが大切になる。相手に合わせた形でアドバイスできれば、同じ情報でも断然価値が上がる。

 私も誰かへアドバイスするときは、独りよがりにならないよう、できるだけ相手を観察するよう注意している。例えば、何か言いたくなったときには、自分の言いたいことよりも先に、相手への質問から始める。さらに、自分が話したら、必ず相手の反応を見る。また、相手が話し始めたときは、次を促してくれるまで待つ、などである。患者さんや生徒さんとの会話中などは、特に意識している。

 子育ても同様だ。「口うるさいだけで、何も分かっていない」おせっかいママの烙印(らくいん)を押されたくなければ、子供が自ら質問したり、気持ちを話してくれたりするのを「待つ」ことが重要だ。言わずもがな、忍耐力を伴うことは覚悟しなければならない。

 相手が求めていることを知ろうとする姿勢を持つだけで、ただ迷惑でしかなかったおせっかいは、本当に誰かの役に立つ素晴らしい行為に変わる瞬間がそこにある。

【プロフィル】伊豆はるか

 いず・はるか 兵庫県出身、精神科医・3児の母。慶大在学中に会社を設立し、塾や飲食店を経営。社長業の傍ら医学部入学。33歳で医師免許を取得。現在は精神科医・訪問診療医として働きながら、女性の新しい生き方を提案する「マルチライフプロジェクト」を主宰。現実的かつ具体的手法で女性を導く講座は毎回満席。